サルコペニア
先日、75歳のお知り合いの方からお電話をいただきました。
ここのところ痩せてしまい、横になるとお尻やら腰やらが痛くてあまり眠れないということでした。
その方の脂肪量の減少も気になりますが、もっと気になるのは筋肉量の減少です。
そこで、今回は筋肉の減少について考えていきましょう。
皆様は、「サルコペニア」という言葉を聞かれたことがあると思います。
サルコペニアとは、加齢や生活習慣の影響によって筋肉の量が減ることを意味する言葉です。
サルコはギリシャ語由来で「筋肉」を表し、ペニアは「減少」を表しています。
1980年代の後半にアメリカの学者が提唱し、筋肉の低下に対して注意を促しました。
2016年には、国際疾病分類に登録されたため、現在では疾患とされています。
サルコペニアになると、歩く、立ち上がるなどの日常生活を送る上での基本的な動作にも影響が出てきます。
そうなると介護が必要となるだけでなく、他の疾患の重症化につながり、生命の存続にも影響をあたえます。
●加齢による筋肉量の変化
生まれたばかりの赤ちゃんを思い出してください。
赤ちゃんは、手足をバタバタさせるだけで、寝返りも打てずに、まだ歩けませんよね。
それは、生まれたばかりの赤ちゃんの筋肉量が少ないからです。
成長するにつれて、寝返りが打て、ハイハイし、歩けるようになります。
それは筋肉量が増えることで可能になる動きです。
筋肉は、いつも合成と分解を繰り返しています。
20歳ぐらいまでは、筋肉の組織は太く長くなっていきますが、中年期にさしかかる頃から徐々に筋肉量は減少します。
それは、加齢によって分解される量が合成される量よりも多くなりやすいためです。
70歳代では20歳代の4割程度に減少するというのが、一般的なようです。
だからこそ、筋肉を合成する力を高めて筋肉量を維持することが重要です。
筋肉は生まれ変わる期間が短く、1~2か月で組織の半分が入れ替わります。
高齢になっても筋肉は増やすことができるのです。
では、もう少し詳しく筋肉のことをみていきましょう。
●筋肉とは
筋肉は体の重量全体に対して40%~50%を占める重要なもので、大小約600個あり、「骨格筋」「心筋」「平滑筋」の3種類があります。
★骨格筋
腕や脚の筋肉、腹筋、背筋などで、体を支え、動かす役割を担っています。
自分の意志で動かすことができます。
★心筋
心筋は心臓だけにある筋肉で、構造は骨格筋に似ています。
心臓の壁を作り、心臓を動かし続けるポンプの役割を果たしています。
自分の意思でコントロールすることができません。
★平滑筋
血管や内壁の壁にある筋肉で、血液を運んだり、胃腸、子宮、膀胱を動かしたりする働きをしています。
平滑筋は自律神経によって支配されており、自分の意思でコントロールできないという特徴があります。
●筋肉の重要な働き
筋肉があるからこそ、人は体を支えて、動かすことができるのです。
それだけでなく、私たちが生きていくための様々な活動を支えてくれています。
① 体を動かし、姿勢を保つ
骨と骨をつなぐようについている骨格筋が伸び縮みすることで、歩く、走る、座るなどの動作ができます。
そして、重力の影響を受けても姿勢を保てるようにしてくれています。
② 衝撃の吸収、血管、臓器の保護
筋肉が覆ってくれているからこそ、血管、内臓、骨も衝撃から守られているのです。
③ ポンプの役割
心臓から押し出された血液が、再び心臓に戻るために、体の各部位の筋肉が収縮することで静脈に圧力をかけて、血液の循環を助けるのです。
心臓からもっとも遠い足に巡ってきた血液を心臓に押し戻す時に重要な役割を果たすのが、ふくらはぎの筋肉であり、その働きから「第二の心臓」とも呼ばれています。
④ 熱をつくる、代謝をあげる
36度から37度に保たれている人間の体温の約6割は筋肉で作られています。
そのため、筋肉は常にエネルギーを消費しています。筋肉量が多いと熱の発生量が増えるため、代謝がアップします。
⑤ 免疫力をあげる
リンパ球を始めとする免疫細胞は、グルタミンという アミノ酸によって活性化されます。
このグルタミンは、筋肉内に多く蓄えられていることから、筋肉が減ってしまうと免疫機能が低下してしまうといわれています。
⑥ ホルモンの産生
骨格筋が産生するホルモンの主な役割には、筋肉や骨の形成や再生、抗炎症作用、糖質や脂質の代謝への関与、心筋細胞や血管内皮細胞の保護などがあるといわれています。
⑦ 水分を蓄える
人間の体の中で、最も大量の水分を保持しているのは、実は「筋肉」です。
年配者に熱中症を発症する方が多い理由の一つが筋肉量の低下による水分量の減少だといわれています。
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